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私はこの作品を通じて、人の温かさを感じました。

 

舞台となるのは、海が見える田舎町です。

 

中学時代、この町で3年間を過ごした主人公広瀬は

 

そこで共に過ごした佐倉めぐみからの手紙をきっかけに

 

久しぶりに海が見える町を訪れるところから、物語は始まります。

 

 

 

 

まず、この作品の良いと思ったところは

情景描写ですね。

 

夏、田舎、海。

 

この3点の描写が好きです。

向かう途中の電車の車窓から見える景色、

町を歩いている最中の描写。

まるで、その場にいるような感覚にさせてくれます。

 

 

 

 

 

 

 

そして、広瀬はめぐみだけでなく、めぐみの弟の健司や

めぐみの家族と共に、懐かしい時間を過ごします。

その一つ一つの時間が、とても大切に描かれています。

都会のように、刺激に溢れているわけではありませんが

人と人との繋がりの濃さを感じましたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品では、とても優しい時間が流れます。

ですが終盤、めぐみが抱えている問題が明らかになります。

それは、高校中退です。

めぐみはなぜ中退したか、具体的な原因を語りません。

ですが、めぐみはただ落ち込んでいるわけではなく、

未来を見据えて前進しています。

それを受け入れてくれる家族が、すごいと思いましたね。

お互いを信頼している、とても良い家族だと思いました。

そして、広瀬もそんなめぐみに対して、アドバイスをしたりはしません。

めぐみから聞き上手と言われていますが、その通りだと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広瀬自身も、問題を抱えています。

それは、作中では明らかになりません。

大好きだった絵を描くことをやめてしまうほどのことです。

自分のことを高校生、と地の文で言っていた気がするので、

高校はやめていないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品はたった3日間のお話であり、

登場人物たちの抱える問題が、完全に解決したわけではありません。

ですが、彼らの心は変わりました。

物事は気持ちの持ちようで大きく変わります。

この3日間で彼らの世界の見方は、より明るくなりました。

この世界は、優しい人だけで構成されていません。

自分にとって嫌な人もいますし、嫌な出来事も起こります。

それでも、自分を受け入れてくれる場所や優しい人はいる。

そんなことが伝わってきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

前を向いて歩けとか、明るく生きろとか

この作品に説教のようなメッセージはありません。

ただ、優しく語り掛けてくる。

肯定してくれる。

そんな作品です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイドストーリーの健司のセリフで、めぐみと

同じように泣きそうになりました。

健司は正直、最初はただの賑やかしだと思っていました。

しかし、違いました。

健司も幼いなりに姉のことを一生懸命考え、行動していたのです。

健司も夏色のコントラストの世界を構成する

大切な一員なのです。

 

 

 

 

温かい海の見える町と、優しい人たちが印象的な

素敵な作品でした。

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