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※この作品はエロゲーなので、18歳未満の方はプレイしないでください。​

ふゆあかりは小説家志望の主人公祐一と、素性不明のヒロイン明里の物語です。

 

プレイし終わっての感想ですが。

 

「ここで終わり!?」

 

という驚きがありました。

 

明里がどんな家庭環境なのか、どんな問題を抱えていたのかなどは一切明らかになりません。

 

そして、祐一がその後どんな道を歩むのかもわかりません。

 

プレイヤーの考察に委ねる、ということでしょう。

 

それでは、祐一について考えていきます。

 

祐一は人間関係の構築が苦手で、ずっと本の世界に逃げていました。

 

19歳、大学生になった現在でも、小説家を目指すことで、「逃げて」いるんですね。

 

元々は、自分を救ってくれた小説のように、人々を救えるような、感動できる小説を

 

書きたい、という夢があったのですが、時間の流れと共にその思いは風化し、

 

今では就職や周りとの関りから逃げるための口実になっています。

 

それは、前向きな夢とは言えず、後ろ向きな夢です。

 

こんな自分が小説家になれるわけがないと、祐一自身も薄々感じています。

 

この主人公、まるで私みたいだと感じました。

 

どうしようもなく、小さくて弱い人間です。

 

さて、そんな祐一と関わり合いを持とうとする人物がいます。

 

それが、明里です。

 

明里の笑顔は祐一にとって、とても眩しく映り祐一を癒すと同時に、彼の持つ性癖

 

凌辱願望を刺激します。

 

凌辱願望というのも、この作品を構成する重要な要素だと思います。

 

祐一にとって、きっと女性というのは思い通りにならないものなのでしょう。

 

モテないどころか、女生との関りさえない。

 

そんな祐一が、男性の圧倒的な力を持って女性を思い通りにする。

 

そこに快感を感じるのは、想像できるでしょう。

 

私は拙作、あなたの命の価値やその傷に触れてで

 

性的虐待を扱いましたが、これらの行為は性欲の解消のためだけではありません。

 

私が読んだ資料に書いてありましたが、男性は女性を力で支配することに

 

喜びを感じるのです。

 

そういう、生き物なのです。

 

そして、祐一が明里を凌辱した後、出版社から連絡がありました。

 

取り返しのつかない、過ちを犯した直後です。

 

その後、祐一は明里に会いに行きます。

 

しかし、明里は川で手首を切り、自殺しようとしていたのです。

 

祐一は助けるわけでもなく、ただ死んでいく明里を見ていました。

 

ここで、物語は終わります。

 

では、明里はなぜ自殺するまで追い詰められたのでしょうか?

 

そして、なぜ毎日のように橋の下に現れたのでしょうか?

 

明里が学生であることはわかります。

 

いじめにでも遭っていたのでしょうか。

 

それとも、家庭での問題を抱えていたのでしょうか。

 

毎日のように学校をサボって橋の下に行っていれば、親には気づかれます。

 

ですが、それでも行っていたということは、親はいないか、ほったらかしなのでしょう。

 

この時点で、家庭に問題があることは、明らかです。

 

察するに、明里は祐一を家族のように思っていたのでしょう。

 

それこそ、兄のように。

 

明里は家庭に問題があって、家族というものを求めていたのでしょう。

 

あの夜も、きっと家庭でトラブルが起きて橋の下に逃げ出してきたのでしょう。

 

祐一という、たった一人の疑似的な兄に会うために。

 

しかし、祐一は家族ならしてはいけないことをしてしまいます。

 

いえ、家族でなくてもしてはいけません。

 

祐一にとって、明里が唯一の支えだったように、

 

明里にとっても、祐一は唯一の家族であり、唯一の人とのつながりだったのでしょう。

 

人は人との関わりなくして生きてはいけません。

 

明里は唯一の笑顔を向ける相手を最悪の形で失ったのです。

 

どれほど、傷ついたのでしょう。

 

だから、明里は死を選んだのです。

 

祐一があの後、法の裁きを受けても明里は生き返りません。

 

たとえ生き返ったところで、もうあの笑顔は見られません。

 

全ては祐一の弱さが招いたのです。

 

人と関わることを避け、自分に言い訳をし続け、逃げ続けた人間への罰なのです。

 

祐一が小説家として生きるなら、明里とのことを必ず作品にするでしょう。

 

その時、祐一がどんな思いで作品に向かうのか。

 

どんな作品が出来上がるのか。
 

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